Wor(l)ds プロジェクト レポート 第1回

この記事は、Calligraphy & Lettering Arts Society (英)の会報誌「The EDGE」2008年春号に掲載されたものです。 レターアーツが社会とどのように関わって行くことができるのか、その可能性を教えてくれるものとして、またそれを考えるきっかけになるものとして、J-LAFはこの「Wor(l)dsプロジェクト」を2回に亘って取り上げていきます。 第1回目の今回は、南アフリカ出身でイギリス在住のカリグラファー、Lin KerrがWor(l)dsプロジェクト開幕前にthe EDGEに書いたこの記事をお送りし、次回は、J-LAFからプロジェクト参加者の一人、Beverly Gillespieに執筆をお願いした開幕後の更に踏み込んだレポートをご紹介します。2つの記事を通して読んでいただくと、このWor(l)dsプロジェクトの全体像をよりよく理解していただけると考えています。

2008年夏、ブリュージュ

1.Maud Bekaert

1.Maud Bekaert

レターカーバー(文字の彫刻家)で、エネルギーの塊のような小柄な女性が、自分の才能を誰かへの救いの手として使い、社会を変えることを夢見ていた。

2005年の年末に初めて南アフリカを訪れたMaud Bekaertは、エイズの蔓延と200万人もの孤児がいる現実に震え上がった。また更に、彼女の夢を共に分かち合う覚悟のあるカリグラファーたちがいると分かって驚いた。そして一年後、詩と約束を手に、彼女は南アフリカに帰ることとなる。

Brugge Plus他のスポンサーはこのプロジェクトWor(l)dsを支援し、ベルギーや南アフリカの詩人やソングライターたちは協力を約束し、ベルギーの彫刻家たちはこの志の高いプロジェクトの実現に、自分達の技術をボランティア提供すると申し出た。

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2.Mauld videoing some of the designers / 3.Designers at work / 4.Carving in situ

こうして2007年 2月、南アフリカのデザイナーのグループは、「Spiced in the South to be carved in the North.」(北の地で彫られるべく、南の地で趣を加えた)という文字のデザインをするため、ケープタウンに集合した。私は幸運にもその非常に面白いグループの一員として参加した。このグループは概ね、成人女性のカリグラファー、そして、アフリカ難民である若い黒人アーティストで構成されていた。そのうち数名は、文字のデザインをした経験が全く無かったのだ!

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5.Elike dag -Design:Jeff Sochen Words:Ravmond van het Groenewoud
6.Carving painted in deep red

巨大な壁面に自分のアートを描いて見せたグラフィティ・アーティストのMak1One、及びアフリカの音節文字を題材に扱ったAndrew van der Merweによりインスピレーション・ワークショップが開催された。文字デザイナーたちによる最終的なデザインはMaudがブルージュに持ち帰り、それぞれが1〜2トンもある 40の石は、ストーン・ルート(石の道)に設置されるために既に彫刻されている。

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7.Aan Geluk -Design:Lin Kerr Carving:Wim Dufourmont. Words:Stef Bos
8.Aan Geluk-detail -Design:Lin Kerr Carving:Wim Dufourmont. Words:Stef Bos

Wor(l)ds フェスティバルとストーン・ルートは、2008年6月14日に、ミュージシャン、ソングライター、詩人によるコンサートで幕を開け、3ヶ月間に亘り開催される。9月末には、彫刻された石が競売にかけられ、アフリカの最も幼い脆弱な子供達のために資金が集められる。収益金はSprinkle and Breadlineというベルギーと南アフリカの組織によって管理され、彼らにより慈善団体に直接渡されることが保証されている。

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9.de gewoonte -Design:Leezette Turner Carving:Trui Hooft Words:Stef Bos
10.de gewoonte-detail -Design:Leezette Turner Carving:Trui Hooft Words:Stef Bos

Stone Routeは、ブルージュのコンサート・ホールから始まり、リッセヴェーグ、ダム、そしてゼーブルグへと進む。ダムへとつづく道は運河船でたどることができ、他の道は、自転車や徒歩で行くことができる。ダム観光センターでは、プロジェクトの創作過程の写真展が開かれる。私は、昨年11月にMaudと初めてダムを訪れたが、運河船ルートの最終地点となっている素晴らしい村である。

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11.Die Here stel die see se grense -Design:Helen de hass Carving:Karel de Haas Ceramic:Diane Heesom-Green
12.Taking Turns-acrvlic on canvas 1200x1800mm Collaborative piece Heleen de haas, Lin Kerr and Andrew van der Merwe

一方、ブリュージュでは、カリグラフィー・ショップのシンポジオンにて、石に彫った文字のオリジナルレイアウトが展示される。そして、マンナ ギャラリーでは夏の間、南アフリカのカリグラファー達の作品展示を企画している。私も、Heleen De HaasやAndrew Van der Merweと共に参加を予定している。コラボレーションとして、ケープタウンの一流陶芸家達が作った作品にカリグラファー達が文字を書いたものもある。

7月には、Andrew van der Merweがゼーブルグを訪れ、海岸で素晴らしいサンド・カービング(砂の彫刻)を実演する。サーファーでもあるAndrewが、海を愛する心と文字を愛する心を併せて海岸に書いたカリグラフィーの写真から得られる収益金は、全てSprinkle and Breadlineに寄付される。

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13.Platboom / 14.Sunset / 15.Eternite

そして、三週間前、Maud Bekaertは、2008年の最も傑出したブリュージュ市民として賞を授与された。彼女はこのプロジェクトのために、休むことなく精力的に働き、無条件に自分の時間や資金を提供した。昨年のプロジェクトに引き続き、彼女は南アフリカにて新しい世代のレター・カーバーに、カービングを伝授している。それにより、彼らは社会的に力をつけるのである。

Maudは、与えられた全ての称賛に値する。
そして、Wor(l)dsプロジェクトに携わった全ての人にとって、カリグラフィーが新たな意味を持つものとなった。
Lin Kerr

日程
マンナ作品展 オープニング 6月14日〜9月14日
Wor(l)ds フェスティバル 6月14日〜9月14日
石のパブリック・オークション 9月28日

観光案内所 11 Burg eメール:toerism@brugge.be
ダム観光センター Wor(l)dsプロジェクトと製作過程の写真展
シンポジオン カリグラフィー・ショップ:オリジナルのレイアウトの展示
41 Oostmeers, Brugge
マンナ Lin Kerr、 Andrew Van der Merwe,Hellen De Haasと
他Wor(l)ds プロジェクト参加者による南アフリカのカリグラフィー
3 Heilige-Geestraat, Brugge  www.muurkranten.be

Maud Bekaert:www.lettersinsteen.be
Brugge Plus: www.bruggeplus.be
Sprinkle: www.sprinkle.be
Breadline: www.breadlineafrica.org.za