カリグラフィーには、文字の形そのものが持つデザイン性、ことばの表現性、線の即興性、間や空間で表わされる精神性など、様々な芸術的要素が存在します。そして、近年のカリグラフィーは、書体そのものの美しさを表現する伝統的なスタイルから、独創性のある芸術的な表現へと発展し、カリグラフィーというジャンル自体の範囲が広がっています。その幅広い範囲に存在する表現の背景にあるのは、書物や碑文の歴史、活字との密接な関係、道具や画材等メディア選択肢の広がり、欧文アルファベットとは異なる文字文化からの影響などです。こうした範囲の広がりによって、「カリグラフィー」の外側に「レターアーツ」という包括の枠が近年新たに生まれました。このレターアーツという呼称は、欧米では徐々に浸透しています。J-LAFは、この「レターアーツ」を、カリグラフィーや書といった手書きだけではなく、活字やレターカッティングなど、様々な分野に及ぶ広範囲な文字芸術と明確に定義付けました。
「日本・ベルギー レターアーツ展」では、レターアーツの範囲に存在するベルギーと日本の様々な文字表現をご覧いただきます。今まで異なる分野として捉えられていたものを、文字芸術という横軸でつないだ国内初の展覧会です。また、今回ご紹介するベルギーのカリグラフィーは、コンテンポラリーなレターアーツとして独自な形で発達しています。この展覧会で、日本とベルギーのアーティストによる文字芸術の共演をご堪能戴ければ幸いです。
J-LAFは、今後レターアーツという分野が文字表現の芸術として確立していくこと、そして、この分野の中で更に新たな実験的試みが生まれ、発展していくことを心から期待しています。
最後になりましたが、本展覧会開催にあたりご協力いただいきましたベルギーをはじめとする各方面関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。
三戸美奈子
[J-LAF主催] 日本・ベルギー レターアーツ展 / 2009.7
- 開催期間
- 2009年7月2日(木)〜7月14日(火)
- 時 間
- 11:30~19:00(最終日は16:00まで)
- 場 所
- 横浜BankART Studio NYK
- 主 催
- Japan Letter Arts Forum (略称 J-LAF)
- テーマ
- 「Line & Spirit」 -線とこころ-
- 出展者
- 日本人カリグラファー(公募),ベルギーカリグラファー、
日本人招待アーティスト(浅葉克己、木村翼沙、白井敬尚、遠山由美)、コラボ作品 、全約50点 - 審査員
- 浅葉克己、白井敬尚、三戸美奈子、清水裕子
- 関連イベント
- 浅葉克己氏レクチャー(東京),
Yves Leterme氏のワークショップ(名古屋, 東京) - 後 援
- ベルギー王国大使館、日本・ベルギー協会、TOOLS
- 助成金
- 野村国際文化財団