ワークショップレポート
●「ドローイング入門WS2」ワークショップレポート 大槻亜妃
22018年に、ドローイング入門WS1を受講していたので、今回は、さらにドローイングした線を洗練させるために、次のステップのドローイング入門WS2というクラスを受けてきました。
今回は、「VISION」という単語を選び、事前にある程度の形にしたものを持参しました。
それがこちら。
【VISION-01】
線の強弱は、ほぼなく、単調な感じです。事前に描いていた時は、これはこれで良くできたかなと思っていたのですが。。
当日、頂いたハンドアウトをみていたら、参考にしてみたい書体があったので、それを真似て少し太く、線の強弱をつけて書き直してみました。
【VISION-02】
少しずつ様子見ながら肉付けしていったので、【VISION-01】からはだいぶ変化して、メリハリがでて、しっかりとした印象となりました。
手直しは、0.1ミリ単位。清水さんからは、修正し、遠くからみて、それがどうなのかを一緒に判断してもらいます。でも、どのように判断し、どのような線を足すか、消すかの最終判断を決めるのは、自分です。
【VISION-03】
些細な修正なのですが、【VISION-02】と【VISION-03】の違い、お気づきでしょうか。
実は、Sが変化しています。Sのトップとボトムのラインの方向を平行に揃え全体的になめらかにしました。
そして、このVISIONは出来上がったら、シルクスクリーン印刷をしたかったので、縮小することも視野に入れて作成していました。
基本の高さは、4cmで描いています。(上)この大きさで描いていると、いろいろと十分な状態である感覚におちいりますが、50%の縮小(左下)をしてみると、とってもさっぱりした印象へ。さらに25%まで縮小(右下)すると、頼りない感じにすら見えます。
原画(100%)はもう少し重厚感を加えてもいいかもしれません。
【VISION-04】
気持ち、太くしてみたのですが、あまり【VISION-03】とは変化がないです。
【VISION-05】
だいぶ、男前になってきました。一番最初に描いた【VISION-01】がとてもほっそりと感じます。
【VISION-05】は、Sだけでなく、VにもNにも動きをいれました。
100%で描いている時は、Nの異変には気がついていなかったのですが、25%の縮小をしたら、Nだけが、微妙に大きく違和感があります。縮小することが、こんなにもレイアウトに変化を及ぼすとは、思いもしませんでした。今後は、縮小した時のイメージができるようになるという課題をいただきました。
私の解釈ですが、ドローイングレターとは、カリグラフィーの基本形のアルファベットをベースにして、独自のアルファベットを作りだすことだと思っています。
ドローイングレターには、「これ!」という正解はないので、アルファベットの形・線の太さ・文字と文字の間のバランスを測りながらというか、図りながら、単語(または文章)全体をどのようにデザインしたいのか?という、自分の意志と自分の感覚による判断が必要になるので、見る目も養われてくると思います。
自分の判断で文字の形を作っていくことは、大変でもあるけど、楽しくもあります。そして、細かな作業とはなりますが、時間をかけただけ、できあがりの具合は違ってきます。
ワークショップ中に講師の清水さんがよくおっしゃっていたのが、「トライ&エラー」。
判断してトライして、エラーを受け入れ修正をしていく。このことは、何事にも言えることだなぁと文字を書きながらも人生のお勉強もできてしまう、豊かな時間を過ごせるワークショップでした。
●「ドローイング入門WS2」ワークショップレポート 丸山文絵
文字の成り立ちを基本から学びたいと思い昨年から清水先生のドローイングのWSに参加しています。初めはカリグラフィの経験もなく講義についていけるのか、不安もありましたが、清水先生のワークショップは文字の成り立ちや骨格を基礎から説明いただけるので手で描いていくうちに少しずつ理解が深まっていきました。
今回のテーマは「形作りの極意とセリフ」。前回の平ペンで描いた文字をサンセリフ体へ調整したものを次はセリフをつけてみるという内容でした。
■平ペン文字からの調整
今回はWS当日までに課題を作成するところから始まりました。
2018年のWSで使用した平ペンの文字をトレースしサンセリフに調整していきました。
今回は2種類描いてみました。
< A-1 >…事前に用意した文字
< B > …書体Avenirに近い文字
平ペン文字(前回のワークショップの教材)
→サンセリフ(書体Optimaに近い文字)…(A-1)
サンセリフ(書体Avenirに近い文字)…(B)
平ペン文字からサンセリフへと調整する際にCとUの修正にかなり苦心しました。それが、講義でカウンターの軸の傾きのことを教えていただいたので原因がわかり、非常に納得しました。斜めの軸の文字から肉付けをして調整した為、なかなか目指す文字の形にならなかったのです。最終的に(B)はWSでは使用しませんでしたが、カウンターの軸の向きが文字の形成に大きく影響することを理解しました。
〈平ペン文字〉
カウンターの軸の向き:斜め
↓
〈書体Avenirに近い文字〉
カウンターの軸の向き:垂直
■セリフをつける
WSに持参した文字(A-1)を修正(A-2)後、配布された資料の中からPaul Reeveerさんのデザインを参考にセリフを付け加えました。(A-3)
< A-2 >…A-1をWSで調整したもの
< A-3 >…Paul Reeveerさんのデザインをもとにセリフをつけたもの
シャープな角もなく文字の全ての角に小さな丸を入れることで、出来上がりの文字の印象が大きく変わったことに驚きました。
ビジネススーツから休日の街着に着替えたような印象でした。
調整したサンセリフからは、どんなセリフをつけたら良いか全く見当がつかなかったのですが、セリフをつけることで、文字の形のバランスや字間も変わってくることを自分の手と目で感じられたのがとても新鮮でした。
WSの最後に参加された皆さんの作品を見て、セリフの種類の多様性を垣間見ました。
文字をボディとすると、セリフは靴のようにも思えました。
革靴を履けば紳士のようにもなり、ヒールを履けばエレガントな装いに、シューズを履けばカジュアルにもなるような…
一つの文字でさえ、いろんなセリフの選択肢のがあるので、セリフの懐の深さを知ることができました。
後日、同じベースの文字(A-2)からセリフを変えて文字を作ってみました。セリフは漢字でいう「うろこ」にも似ていると考え、うろこのようなセリフをつけてみました。(A-4)
■全体の感想
平ペン文字からサンセリフ、サンセリフからセリフ付けを経験し、やっと少し文字の骨格が見えてきたように思います。
日頃、文字のトレースなどはしているものの、やはり筆や平ペンで書いていないと文字の成り立ちというものが理解不足だったなという点に気づきました。これから文字を制作していく上で、文字に違和感を感じた時は、どこが必要なのかまずは基本の形に戻り考察し、創作に生かしたいと思います。
詳細・申込み要項のご案内 2019.5.7
『清水裕子ドローイング入門 ワークショップ 2019 詳細・申込み要項のご案内』をNewsのページにアップしました。
開催のご案内
2019年8月末〜9月にかけて、東京、神戸、福岡の3カ所において清水裕子ドローイング入門のワークショップを開催いたします。
このワークショップは昨年大変好評だった初心者向け入門クラスと、各自それぞれ自分で作った文字を洗練させていく内容の2クラスです。
5月連休明けに募集詳細のお知らせをウェブサイトに掲載し、6月初めに募集を開始する予定です。
クラスの内容は下記の通りです。多くの方の参加をお待ちしております。
WS1 平ペン文字から成り立ちを学ぶ〈大文字〉
文字をドローイングする面白さを体験してもらいながら、文字の基本的な成り立ち(構造)を知ってもらうことを目的とした、ドローイング初心者向け入門クラスです。カリグラフィーやレタリング未経験者でも始めやすいよう、カリグラフィーの平ペンで書いた手本のトレースから始め、最終的には、クリエィティブな要素も織りまぜながら文字をデザインしていきます。手書きや手作り愛好家には自分の文字を描く絶好のチャンスです。また、日頃文字を触ることがパソコン画面中心の方にとっても、手を動かしながら文字の構造を学ぶ良い機会となるでしょう。
※このワークショップは、2018年にJ-LAF主催で行ったドローイングWSと同一内容です。
定員:15名
WS2 形作りの極意とセリフ〈大文字〉
各自が事前に描いて持参する文字を、基本的な文字の構造に基づいた大切なポイントを押さえながら、さらに洗練させていくことを主目的としたクラスです。持参する文字は未完成で構いません。文字の形が整っていき、並んだ文字全体が揃っていく変化の過程全てから、多くを学ぶことができます。どこをどう見て修正していけば良いのか。そこを理解すると、上達はもちろんのこと、作業の面白味も増していきます。クラスの後半にはセリフ(serif)も紹介します。セリフの形だけでなく、セリフの有る/無しで変わる印象の違いも、文字のデザインには大切なポイントです。さらに奥深い世界を覗いてみてください。
定員:15名
<プロフィール>
清水裕子(しみずひろこ)
兵庫県芦屋市在住カリグラファー、レターカッター。ボストン在住中の1994年にカリグラフィーを始める。1997年帰国後、フリーランスのカリグラファーとして活動し、カリグラフィーの指導にあたる。2009年からレターカッティングをゴードン恵美に師事。2017年からJ-LAF主催ゴードン恵美レターカッティング入門ワークショップの講師アシスタント。カリグラフィーで培った文字の知識と経験を石にも展開している。三戸美奈子著『カリグラフィー・ブック』(誠文堂新光社、2011年)協力、及び、同著の増補改訂版(2017年)では「文字のドローイング」の章を執筆。レターアーツ専門誌『Letter Arts Review』(John Neal Bookseller)年鑑掲載や海外展覧会招待展示、海外カンファレンス参加など、国内外で活動している。
スタジオレターアーツ主宰
NPO法人ジャパン・レターアーツ・フォーラム副代表理事
ウェブサイトhttps://studio-letterarts.com