ユルゲン・ヴェルケムスト(Jurgen Vercaemst) 「カリグラフィーWS」2023

Jurgen Vercaemst Calligraphy Workshop「ワークショップレポート」

6月に開催されました、Jurgen Vercaemstカリグラフィーワークショップに参加された方よりレポートが届きました。「イタリック体のドローイング」クラスは坂本敬子さん、「小文字のドローイングに色を添えて」クラスは浪本浩一さんにご担当いただきました。
お2人のレポートを通して、ワークショップの様子を感じていただけましたら、幸いです。

ワークショップ担当:久賀

●『Drawn Italic』WSレポート 坂本敬子
●『小文字のドローイングに色を添えて』WSレポート 浪本浩一

●『Drawn Italic』WSレポート 坂本敬子

書いてみたいビルドアップ文字のWS!と、思わず申し込んでしまいました。準備物がいっぱいあり、正直なんて「注文の多いWS」、「Moleskine Notebookって何だろう???」
初めてWSに参加した受講生のレポートです。

初日、大荷物を担いで会場に着き、配られたテキストに見入っていると、ユルゲンさんが入って来られました。こだわりの準備物や作品から想像していたイメージとは違い、穏やかで物静かな感じの方でした。

作品の一つとして、今まで教わったことのあるカリグラファーの名前(生徒を含む)を書き綴った、という手帳のページをみせていただきました。あらゆる方向に、逆さだったり、ウエーブしていたり…アルファベットで埋め尽くされていました。ただ順番に書いていっただけ、と言われましたが、どうしてあんなに緻密にデザインとしてもすばらしく書けるのか、とても不思議でした。

写真①② 1日目のデモのコピー

デモは分かりやすく優しい口調でとても丁寧。「丁寧に、ゆっくり書けばきれいに書ける」と言われていました。各自の書いたものを見て回る時も、やさしく丁寧にとても時間がかかりました。

「気の強い方ですね、筆圧が強すぎる。もっと丁寧に、もっとソフトに」と、やさしい口調で私に言われました。
筆圧はちょっと強めだけど、荒いつもりは全く無いのに「丁寧に、丁寧に」。帰宅後その日の課題を完成させた時、私の丁寧の基準が違っていたことに気づきました。

写真③ 翌日添削してもらった1日目の課題
God Handがちょっと入り見違えるように!

写真④⑤ 2日目のデモのコピー

④変化をつけて文字を太くするときも、中抜きで太い文字を書くときも、はじめはシャーペンで薄く書き、なぞりながら太くする。
中抜き文字の色付けする場合「塗る」というより短い細い線を少しずつ、向きを変えながら「書く」。ムラが色の変化になって面白くなって良い。
⑤大胆に見える文字の線だけれど、実は細い線を少しずつ繋いだもの。これもゆっくり書いていくことで全体を見ながら修正をかけられる。
「ゆっくり丁寧に」がすべてに共通。

写真⑥ 2日目の課題の一つ
God HandがWの文字に黒を少し入れて引き締まる!

課題を見て回った後「ここは強い方が多いですね~」と、ユルゲンさん。
全体が笑いに包まれ、私はちょっとホッ、、、

もっといろいろな作品を見たくてスライドショーにも参加しました。話の中に有名なカリグラファーの名前がいっぱい出てきて楽しく作品を拝見しました。
ユルゲンさんのmoleskin notebook(手帳)も見せていただきました。毎日、Caféの仕事を終えてから2時間、いろいろなことを書き綴るそうですが、その整った文字の細かさ、様々なレイアウト、1ページ1ページが作品のように見えました。初日に見たカリグラファーの名前がびっしり書き綴られた、彼の作品の不思議なレイアウトはmoleskin notebookが源、日々の積み重ねが作品になっていると感じました。

最後に、ユルゲンさんの丁寧な指導に感謝いたします。
そして、初めて参加したJ-LAFのWSを受講する方々のレベルの高さに驚きました。
J-LAFのスタッフの皆さん、大変お世話になり、ありがとうございました。

●『小文字のドローイングに色を添えて』WSレポート 浪本浩一

Jurgen Vercaemst氏(以下ユルゲン)のWSのことを知り、ユルゲンの作例を見てみると、可読性にこだわらない自由な作風、デザイン性のあるレイアウト、鉛筆などカリグラフィーペン以外の道具を使っていることなど、デザイナーの私にとってはそそられる要素ばかりでこれは行かなければ、そして行くなら3日間!だ、と前のめりで申し込みをして今回参加してきました。

さて、まずはこの3日間の基本となるシャーペンで文字を書くことから。ゆっくり、力を入れずに書くように、でも線に強弱を付けるように、とユルゲンから説明がありました。

このゆっくりと、そして力を入れずに書くことに慣れていない私も含めた参加者は、みな苦労することになります。ユルゲンが言う、ゆっくり、力を入れない具合が、想像以上なのです。ついいつものようにサクサクと書いてしまうのです。

上の2行がはじめに書いた字。もっと軽くと指導されて書いた3〜4行にも、もっと“light touch”というユルゲンの添削が書いてあります。5〜6行目でようやく具合をつかんできて軽くなりはじめました。

WSも中盤になると、色が入ってきます。色もあくまでも軽いタッチで書きます。書くというより紙の表面を撫でる感じです。そのように軽く、細く、いろんな色の線が重なっていくことの面白さがユルゲンの関心ごとであることが分かってきます。いろんなメッシュが重なった結果、思いもしない表情が現れるのです。ユルゲンは、意図した表現をねらっている訳ではなく、どんな表情になるのだろうという偶然性をたのしんでいることがワークショップを通して伝わってきました。うまくいかなかった時でも「失敗したと思わず、これもなにかのきっかけになると思えばいいよ」というコメントもなるほどと思いました。とはいえ仕上げに求められる精度は相当精緻なものです。0.03mmのペン先を使わないと書けないくらいのレタッチが必要になります。

WS後半になると着色が入ってきます。ここであえて制作工程と表情の変化が分かるように描いてみました。

3日間手を動かしているうちにだんだんとテクスチャーが重なるおもしろさが分かってきました。
ところでユルゲンが作品を作っていく過程においてで何度も念押ししていたのが、意図を持って書くこと、アプローチに関連性を持たせること。自由に書いているようでも全体の調和がとれていること。それが大事で、突然イレギュラーなことが入ってくるのは違和感がある、とのことでした。このあたりはデザインとも共通性があり、言われていることはよく分かりました。

私自身はここのところ短時間で感覚的に描くことを課題にしていたのですが、今回ゆっくりじっくり精緻な重なりによる世界観を学んだことにより、表現の幅が広がったように感じています。今後、しっかりと復習をしながら、自分なりの表情がでるように取り組んでいきたいと思います。

今回このような貴重な機会を用意してくださったJ-LAFスタッフのみなさまに感謝感謝です。そして丁寧に指導してくださったユルゲンにお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 


受付状況 2023.5.28

『ユルゲン・ヴェルケムスト カリグラフィー ワークショップ受付状況』をnewsのページにアップしました。東京会場の2講座とレクチャー、神戸会場の2講座は申込み受付を締め切りました。

 


ユルゲン・ヴェルケムスト カリグラフィー ワークショップ 2023.2.23

2023年6月に、ベルギーよりユルゲン・ヴェルケムスト氏を講師に迎え、ワークショップを開催いたします。初めての来日です。
ユルゲン・ヴェルケムスト氏は、美しい手書き文字を書くことを大事にする家族の中で成長し、25歳の時に参加したフランク・ミサント(Frank Missant)氏のワークショップと地元のテレビで観たブロディ・ノイエンシュヴァンダー(Brody Neuenschwander)氏の芸術に関するドキュメンタリー番組が、本格的に彼がカリグラフィーの道へ進むきっかけとなりました。彼は、ベルギー国内の著名なカリグラファーはもとより、世界各国で活躍する多くのカリグラファーから学びましたが、特に、イヴ・ルテルム(Yves Leterme)氏は彼の生涯の師であり、ピーター・ソーントン(Peter Thornton)氏から文字の形、描き方、レイアウト構成などについて大きな影響を受けています。
2015年以降、ベルギー国外で開催されるカンファレンスやワークショップの講師として招へいされ、コロナ禍で進んだ各国の「オンラインセミナー」の講師も多く務めています。普段は、ベルギー、ブルージュ近郊の町で、家族でカフェを経営し、そこでカリグラフィーを教えています。活動の様子はウェブサイトからご覧ください。https://www.morriscoffeeandcrafts.be/en/home/

彼の鉛筆による手書き文字は、繊細で美しく、「スケッチブック」のように綴じてまとめられた作品は、鉛筆の濃淡、線の強弱、文字たちは一面に敷き詰められたように並びながらも自由な動きを感じさせ、ひと目で見る者を魅了します。また、添えられる色も穏やかに彼の作品を彩ります。
彼の優しい文字たち、その描き方、リズム、画面構成について、触れて学ぶ機会となります。手で描く楽しさと新しい表現への挑戦に時間をかけて、取組んでください。

今回は、東京と神戸で同じ内容の講座を2クラスずつとスライドレクチャーを各1回開催いたします。講座名・日程・内容について、以下にてご確認ください。

申込方法のご案内は、3月6日(月)にウェブサイトに掲載いたします。案内に従ってお申込みください。申込開始日は以下の通りです。賛助会員と一般の申込開始日が異なりますので、ご留意ください。

■申込開始日時■
賛助会員: 2023年3月7日(火) 22:00〜 ※申込みに会員番号の記入が必要です。
一般申込: 2023年3月13日(月) 22:00〜

■講座の詳細■
【東京開催】
1) イタリック体のドローイング(Drawn Italic/Script) 2日コース
申込み受付を締め切りました
☛ 講座の内容はこちらから
開催日時: 2023年6月7日(水)・8日(木) 9:30~16:30
受講者定員: 18名
受講料: 20,000円
会場: dスタ https://dstudio-dbs.com/

2) 小文字のドローイングに色を添えて(Drawn Lowercase + Colours) 3日コース
申込み受付を締め切りました
☛ 講座の内容はこちらから
開催日時: 2023年6月10日(土)・11日(日)・12日(月) 9:30~16:30
受講者定員: 18名
受講料: 30,000円
会場: 東京23区内未定 ※決定次第お知らせいたします。

3) スライドレクチャー「私のヒーローと師(My Heroes and Teachers)」
申込み受付を締め切りました
~講師が学び師と仰ぐカリグラファーについて語ります
開催日時: 2023年6月10日(土) 18:30~20:00(18:00~19:30に変更の場合あり)
受講定員: 40名
受講料: 1,000円 ※ワークショップ参加者は無料
会場: 東京23区内未定 ※決定次第お知らせいたします。
お申込はこちら→

【神戸開催】
1) イタリック体のドローイング(Drawn Italic/Script) 2日コース
申込み受付を締め切りました
☛ 講座の内容はこちらから
開催日時: 2023年6月14日(水)・15日(木) 9:30~16:30
受講者定員: 18名
受講料: 20,000円
会場: 神戸市教育会館 203 http://www.kobekhall.com/akusesu/
お申込はこちら→

2) 小文字のドローイングに色を添えて(Drawn Lowercase + Colours) 3日コース
申込みを締め切りました
☛ 講座の内容はこちらから
開催日時: 2023年6月17日(土)・18日(日)・19日(月) 9:30~16:30
受講者定員: 18名
受講料: 30,000円
会場: 神戸市教育会館 203 http://www.kobekhall.com/akusesu/
お申込はこちら→

3) スライドレクチャー「私のヒーローと師(My Heroes and Teachers)」
引き続き申込み受け付け中
~講師が学び師と仰ぐカリグラファーについて語ります
開催日時: 2023年6月17日(土) 18:00~19:30
受講定員: 30名
受講料: 1,000円 ※ワークショップ参加者は無料
会場: 神戸市教育会館 203 http://www.kobekhall.com/akusesu/

お申込はこちら→

■講師プロフィール■                               ユルゲン・ヴェルケムスト(Jurgen Vercaemst)
1967 年生まれ ベルギー、クールネ出身のカリグラファー
美しい手書き文字を大切にする家族の中で育ち、10代の頃から手書き原稿に魅せられ、手書き文字作品の収集をする。 25 歳の時に参加したフランク・ミサント(Frank Missant)のワークショップ、地元のテレビ番組で観たブロディ・ノイエンシュヴァンダー(Brody Neuenschwander)の芸術に関するドキュメンタリーが、本格的に彼をカリグラフィーの世界へ導いた。
イヴ・ルテルム(Yves Leterme)は、生涯にわたる師であり、可能な限りイヴのワークショップに参加し学ぶ。また、ピーター・ソーントン(Peter Thornton)より、本質的な文字の形、描き方、レイアウト構成について強く影響を受けている。更に、ヨーカとリーズベット・ボーデンス、ブロディ・ノイエンシュヴァンダー、カール・ロース、ジョン・スティーヴンス、エルモ・ヴァン・スリンガーランド、トーステン・コル、ユアン・クレイトン、クリストファー・ハーネィス、ジュリアン・ウォーターズ、クリストフルとピーテル・ボーデンス、アナンド行美、そしてもちろん、ヤン・ロッシからも学んだ。

2018 年 4 月から、ブルージュ近郊の小さな町ラダーヴォルデで、妻のアネケ(Anneke)と共にカフェを営み、そこで、仲間と共にカリグラフィーを教えている。国内外で講師経験を持つが、その中でハイライトすべきは、2015 年に米国アッシュビルで開催された「カリグラフィー カンファレンス」でのピーター・ソーントンとのチームティーチング、2019 年秋に米国ノースキャロライナ州チェリオで開催されたワークショップでエルモ・ヴァン・スリンガーランドと一緒に務めた講師経験である。最近では、各国の団体で開催されているオンラインセミナーの講師を多く務めている。
鉛筆を愛用し、常にモレスキンのノートを持ち歩るいている。
カフェの情報はこちら
☛ Morris Café & Craft - https://morriscoffeeandcrafts.be/en/home/

*ユルゲン・ヴェルケムスト(Jurgen Vercaemst) に関するスペシャル記事はこちら→