Stone Walkストーン・ウォーク
南アフリカでの作業
南アフリカでの作業は、言葉や文字に興味を持つ人々を一週間のワークショップで引き合わせ、アフリカ大陸を反映する新しく、且つ面白い手書き文字にすることから始まった。
Maud Bekaertは、ベルギーと南アフリカの詩人やソングライターによる30以上の「言葉の断片」を手にやって来た。そして、アフリカ南部及びケープタウンの難民コミュニティーから集まった30人以上の人々が、一週間に亘り一丸となって取り組み始めた。
2. This from the first day of the workshop where Mak1one was teaching us to use spray cans!
彼らが、一人一人に提供された詩や歌の断片に反応し独自の文字を作るには、彼らの意欲をかき立て、情報を提供し、励ましてくれる熟練した指導者や協力者が求められた。そこで、例えば、地元のグラフィティ・アーティストであるMak1oneは、ワークショップの初日にスプレー缶を使いグラフィティを描く作業であるタギングとボミングで、私たちに好きなようにマークや文字を描かせてくれた。Andrew van der Merweは、棒とインクを私たちに手渡し、アフリカ中部と北部の手書き文字などを見せてくれた。Heleen de Haasは、私たちにダンスをさせて、文字というものは、互いに会話しているだけではなく、紙の上で踊ることが大事であるということを理解させ、再び紙とデザインに向き合わせてくれた。そして、そのような指導の間には、Maudが石に彫るとどのように見えるかという視点でアドバイスもくれた。
ワークショップの最終日にはMaudの手元に、どれもユニークで個性のある40以上のデザインがあった。彼女はそれを(彼女の故郷であり、Wor(l)dsプロジェクトの主要スポンサーである)ブリュージュに持ち帰った。Maudがデザインのレイアウトを持ち帰った後、南アフリカ側の人々に出来ることは、どうなるのか期待を膨らませて待つことだった-いったい誰のデザインが選ばれるのだろう。石に彫られたらどうなるのだろう。しかしながら、この取り組みがあったことで、南アフリカでは他にも自発的に取り組みを始めようという考えがふつふつと湧き出てきていたのだが、それについては、またいつか語るとしよう。
ベルギーでの作業
その後は、ベルギーのアーティストの出番であった。石が寄付され、彫る場所もダム(Damme)に準備された。良いデザインが選ばれた後、彫刻家達が14ヶ月間かけて彫った石は、現在Stone Route(石の道)に設置されている。これらの石は、9月末に孤児や脆弱な子供達のために競売にかけられる。彫刻家達が作業したのは、ダムで廃校となった学校だが、その建物もストーン・ウォークで見ることができる。
4. ©Jeske Liossatos/Scriptores Designer: Lin Kerr Letter Cutter: Wim Dufourmont Author: Stef Bos
石の設置には、特別な努力が払われた。例えば、「We spreiden onze vingers uit. We dragen de aarde op handen.」(私たちは、手の指を広げる。私たちは、大地の手を取る。)と彫られた石は、この言葉を書いた詩人Frederik Lucien De Laereの故郷でもあるダムに設置された。ここで言及しておきたいのは、全ての石には個人や組織のスポンサーがいて、彫刻家達は、石を彫る時間を無償で捧げてくれたことである。何名かの彫刻家は、複数の石を彫った。誠に寛大な心の現われである。
Wor(l)dsプロジェクトとストーン・ウォークの幕開け
NKOSI SIKELEL’ AFRIKA!
GOD BLESS AFRICA! (アフリカに神の祝福がありますように!)
これは現在、美しいブリュージュの街の案内所を訪れる全ての人を迎えてくれる言葉である。この言葉は、南アフリカのアーティストでカリグラファーでもある(現在イギリス在住)Linn Kerrによるデザインで、ベルギーの彫刻家Christophe Annysにより彫られた。Wor(l)ds は、6月9日の夕方、ブリュージュのコンサート・ビルディングにて、南アフリカ大使館の観光&文化部のトップであるMantasaye Ngwaila女史によるこの石の除幕式で幕を開けた。
7. Nkosi stone by Lin Kerr. The first stone on the Stone Walk: at the entrance of the Information Centre and Concert Building in Bruges ©Jeske Liossatos/Scriptores
美しいコンサートホールで開催されたブリュージュ市長Patrick Moenaert氏主催のオープニング・セレモニーには、多くのアーティストや名士が詰めかけた。南アフリカからも、5人のアーティストが出席した。そして、このプロジェクトの生みの親でもあり、後ろで支えるエネルギーでもあったMaud Bekaertが製作したカタログの発表により、セレモニーの感動が倍増した。195ページのカタログは、言葉、石、そして関わった人間の旅路を詳細に物語っている。写真も美しいこのカタログは、20ユーロで販売されている。このカタログも愛と寛容さの行為によって後援され、全ての製作作業労務が無償で捧げられたのである。収益金は、脆弱な子供達に寄付される。
ストーン・ウォークを歩く
Stone Routeを歩く人は、石が非常に独特でユニークであることに気付く。サイズも特徴も異なる。そして、勿論、デザインが特殊である。アーティストや言葉の意味を反映しており、4つの街への設置についても十分に検討された。
9. ©Jeske Liossatos/Scriptores Designer: Lin Kerr Letter Cutter: Wim Dufourmont Author: Ronel Nel
10. ©Jeske Liossatos/Scriptores Designer: Lin Kerr Letter Cutter: Adinda Goddyn Author: Toast Coetzer
その中の1つ、Ley MakaleleがデザインしLuc Baeyeにより彫られた石「Laat die Hemel Vrij」(天を開放しよう)を見て人は思う。青みがかった石に彫られており、天だけではなく自由も表現しているようだ。Leyがコンゴから命からがら逃げ出したことや彼のスピリチュアルな心を知ると、人には更に伝わってくるものがある。
12. Sue Williams’ stone - a cityscape in stone
Sue WilliamがデザインしたFrank Polletの言葉「Ik wil een nieuwe stad ontwerpen in de aderende kleuren van het hart」(私は、心臓の静脈の色をした新しい街を設計したい)は、Els Vanthournoutにより彫られ、街の起伏を見ているような感覚と同時に石の温もりも感じ取れる。
14. ©Jeske Liossatos/Scriptores Designer: Phinda Kula Letter Cutter: Maud Bekaert Author: Stef Bos
15. ©Jeske Liossatos/Scriptores Designer: Andrew van der Merwe Letter Cutter: Adinda Goddyn Author: Peter Verhelst
Bart Vonckの言葉「Nooit is Een Kooi」(Neverという言葉は檻と同じ) とEric Mawethuのがっしりとしたデザインは、Luc Baeyeの彫刻でも解釈されているように、「Never」と考えることは、拘束されて自由な発想ができないということだと我々に気付かせてくれる。
17. ©Jeske Liossatos/Scriptores Designer: Yolande Bezuidenhout Letter Cutter: Jos Geusens Author: Hennie Aucamp
18. ©Jeske Liossatos/Scriptores Designer: Dale Botha Letter Cutter: Christophe Annys Author: Anonymous
Stone Routeの始まりを記すLin Kerrの石「Nkosi Sikelel’ Afrika」は、ヨーロッパに住んでいても、アフリカは人の心に刻みこまれ、忘れられないものとなることに気付かせてくれる。Linは、我々が詩の断片をデザインしていた一週間、イギリスからケープタウンまで飛んできて一緒にいてくれた。彼女は、ひっそりと静かにデザインに集中するだけではなく、黒人居住区から来た新しい若手デザイナーたちを応援し、励まし続けた。全ての40の石は、石の美しさ、言葉の意味、そして詩的な周りの風景を楽しみながら、徒歩か自転車でたどれる道沿いに設置されている。
Bev Gillespie