ヘルマン・ツァップ&グドルン・ツァップ「カリグラフィーの世界」レポート

9月27日、秋とは思えぬ強い日差しの中、ダルムシュタットにあるツァップ夫妻のご自宅に、作品を返却するためJ-LAFスタッフ3名、小林章氏、立野竜一氏の5名で訪れました。
振り返れば、初めて作品をお借りしに伺ったのは冬本番、ちょうど8か月前の1月27日のことでした。雪が舞い降りる寒さの中、緊張した訪問者を温かく迎えてくださったご夫妻の姿は忘れることが出来ません。
1日2時間という約束で展示用の作品選び、作品についてのインタビューを行い、3日間連続でご自宅に通いました。帰国する日にも作品を梱包するため再度訪れましたが、はからずも、選んだものとは別の新しい作品を数点ご用意くださっていました。共催者である小林さんが、ご夫妻と懇意にされていることがJ-LAFにとって心強いことではありましたが、お二人の歴史を感じる膨大な作品から決して少なくない点数をお借り出来たことは、私達のご夫妻への敬意が伝わったのではないかと、大変ありがたく思いました。

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*2011年1月 ツァップ邸での作品に関するインタビューと梱包作業

帰国後、展示への準備のため慌ただしい日々が過ぎていき、開催まで残すところ11日となった3月11日に東日本大震災が起きました。直後の混乱は、あらゆるイベントにまで影響を及ぼすこととなり、私達も開催延期を選択せざるを得ませんでした。
そのような状況においてもツァップご夫妻は、終始変わらず私達のことを信頼してくださり、心温かく見守ってくださったことに本当に感謝しております。そして、ご夫妻を心配させないように常に連絡を取ってくださった小林さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。

心情的には非常に辛い時期を過ごしながらも、再度開催まで多くの関係者に助けられながら準備を整え、約半年後、9月13日から25日まで、ギャラリー ル・ベインにて「ヘルマン・ツァップ&グドルン・ツァップ カリグラフィーの世界」は開催されました。
会期中は、予想を遥かに超えた約1,700名の入場者を迎え、中でも、文字に携わる多くの方達に、ご夫妻の素晴らしい作品を直にご覧いただき、カリグラフィーから金属活字、デジタルフォントまで一連の流れを総合的に認識いただいたのではないかと思っています。また、特別協力をいただきました嘉瑞工房の高岡昌生氏による関連プログラムとして、DVD「The Art of Hermann Zapf」(1967年Hallmark社制作、嘉瑞工房所蔵)を特別上映出来たことで、ヘルマン氏が実際に書いている姿をご覧いただけ、本当に良かったと思っています。

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*左から3点 ツァップ展会場風景
*右 会場内パティオでのDVD上映風景

会期後に訪れたダルムシュタットのご自宅では、庭にお茶の用意がされていました。穏やかな時間が流れる中、ご夫妻へ作品展の報告をして、お礼を申し上げました。
部屋に移動してからは、作品を一つ一つ確認して頂きながら返却完了。その後、来場者のお名前やコメントを書いていただいた芳名録を、ご夫妻は一枚一枚丁寧にご覧になりました。
読めるコメントは、全て目を通して、とても嬉しそうな表情をされていたのが印象的でした。

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*左から3点 2011年9月ツァップ邸の庭でお茶の和やかな時間、作品返却と展覧会の報告
*右 来場者芳名帳を丁寧にご覧になるツァップご夫妻

ご夫妻からは、来場者をはじめ展示に関わった全ての人への感謝の言葉をいただき、私達は、様々な困難を乗り切り、作品展が無事に終了したことを実感致しました。最後にツァップご夫妻、関係者の皆さま、ご来場の皆さま全てに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

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*玄関でいつまでも見送ってくださったツァップご夫妻
*尚、今回のツァップ展開催に際し、入場料や売上げからの一部、また開催関係者からのご寄付によって集められました義援金 277,250円を、日本赤十字社に寄付致しましたことをご報告いたします。これはツァップご夫妻の希望でもありました。心より感謝申し上げます。