ゴードン恵美「レターカッティング WS 2012」レポート

3回目となるレターカッティングのワークショップですが、今回もまた参加者の方々の文字に対する情熱に圧倒されました。大阪会場には3回目の参加者の方が6名、そして初心者の方が3名。東京会場には3回目の参加者が2名、2回目の方が3名、そして初心者の方が8名と、沢山の方に参加いただきました。
3回目の参加者の方は、それぞれが彫りたい石を見つけ、それに合わせたデザインをおこし、彫る作業をしました。2回目の方は、1回目のワークショップで終える事ができなかった作業の継続をなさっている方がほとんどでした。今回が初めての参加者の方々は、2回目、3回目の先輩参加者の方々といっしょに作業をする事で、沢山の刺激を受けたようでした。
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このワークショップは、私が4年半、カードーゾ·キンダスリー·ワークショップ(The Cardozo Kindersley Workshop)で経験し学んだ事が基本となっています。カードーゾ·キンダスリー·ワークショップでは、教えられた事を忠実にこなす事を要求されました。実際にワークショップの仕事をまかされ、経験値の異なる兄弟子達といっしょの仕事場にいることで様々な技術を学び、経験を得る事ができましたし、プロの仕事の水準を長い年月をかけて身に付けました。しかしながら、個人それぞれの興味を追求する機会はほとんどありませんでした。自分の興味を追求していける、方向性を探れる場所としては、大学での方が自由にそれができました。私は自己探求も独立して仕事をする場合には欠かせない要素だと思っていました。
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そこで、このレターカッティング·ワークショップでは、個人の興味や方向性を探れるよう、ローハンプトンでおこなわれていた教法の1つであるクリティーク(批評)も採用しています。このクリティークは、講師だけから学ぶだけではなく、参加者同士で個々の潜在的な能力や資質を探求できるような貴重な機会を提供しています。私は大学在学中にこのクリティークから沢山の貴重な事を学び、その有効性を身をもって体験しています。日本でレターカッティングのワークショップを始める前は、このなじみの薄いクリティークが日本の環境には適していないのではないかと不安になりました。私が不安になった理由は、クリティークが意見を言い合う討論が基本になっているからです。でも、この教法をワークショップに導入してみると、意外とすんなりと参加者の方々が受け入れ、それぞれがその時に必要としている事を効果的に学んで、帰路についていらっしゃるように感じました。受け身になりがちな従来の単発のワークショップとは異なり、自発的な学びの場となっていると感じました。

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また、このワークショップでは、個人のペースでワークショップを進められる事に重点を置いています。先を急ぐ必要はまったくありませんし、他の参加者とのペースを比べる必要もありません。それぞれのペースで作業をすすめていただきますが、最終的に自分の作った作品がその時の自分のできる限りベストと考えられる水準である事を、私は参加者の皆さんに求めています。
今回のワークショップでもカリグラファーの方々だけでなく、デザイナーさんや学生さんといった、様々なバックグラウンドをお持ちの方々が参加して下さった事で、文字に対する新たな発見をなさって帰られた方が沢山いらっしゃったようで、素晴しいワークショップとなりました。参加者の皆様には心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。これからも、参加者とともに作るワークショップであり続けたいと思っています。

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レポート / ゴードン恵美