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クリストファー・ハーネィス「孤立した環境の中でのカリグラフィー」前半

Calligraphy in the Cold (孤立した環境の中でのカリグラフィー)
クリストファー・ハーネィス <前半>

25年間ノルウェー・オスロで活動してきたカリグラファーの主観的ストーリー

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中央 ライナー・マリア・リルケの言葉を引用
右 ブックタイトル

私が9歳のとき、ロンドン在住のアイルランド人だった父パトリック・バーンから平ペンをもらいました。僅かな時間しか共に過ごせなかった父でしたが、それはずっと後になっても私の人生に大きな影響を与える出来事でした。そのときもらったのは、イギリスのオスミロイド社の万年筆で、側面のレバーを引いてインクを吸入するタイプのものでした。そのペンを使うと、詰めて書く尖ったゴシックレターやフローリッシュが書けるのだと父は紙ナプキンの上に書いてみせてくれたのですが、その紙ナプキンは、メモや落書きを書き連ねていった他のナプキンやコースター、封筒、レシートと共に失ってしまいました。私の母は1963年に、オペアとよばれる制度(訳註:主に外国語を学ぶ目的で、家事手伝いとして海外の家庭に住ませてもらうこと)を利用して英国・チェルトナムにいた頃に、父と出会いました。父によると、祖父も曾祖父も「カリグラファー」だったそうですが、アイルランド人が話に尾ひれをつける癖があることを差し引けば、おそらく手書き文字が綺麗だったという程度だと思います。自身もアマチュアのカリグラファーだった父は、印刷された練習用の見本を私に送ってくれました。やがてエドワード・ジョンストンの著書『書字法、装飾法、文字造形』(Writing & Illuminating, & Lettering)が届いたとき、私は本の見開きページを作ろうと線を引いたり、自分なりの丸みのある書体を書いてみたりしました。しかしながらこの最初のカリグラフィーへの試みの後は、ペンを引き出しにしまい込んだままで、再び取り出したのは高等学校に上がってからのことでした(ノルウェーの高等学校にあたるものはvideregående skoleといい、ここで私は「文字の歴史」と題した論文を書き上げました)。

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レターデザイン3点

その後、オスロのカフェでウエイターをしていたときには、カフェの黒板に本日のメニューを書いたり、空いた時間に手作りの竹ペン、細筆、オスミロイドのペンでローレンス・ファーリングティ、ジャック・ケルアック、ウォルト・ホィットマンの詩や引用句を書いたりしていました。そしてヨーロッパの鉄道乗り放題で旅していたときには、イタリアのアッシジで絶え間なく雨が降る中、トレイラーハウスで足止めを食らって、仏典『法句経』から数節書いたことも思い出します。知識のないまま書かれた文字の形は一貫性やシャープさに欠けており、きちんとはしていませんでしたが、このような経験から文学とカリグラフィーへの私の関心が呼び起こされ、わずかながら平ペンへの親しみも覚えたのです。

私が最初に受けた仕事は隣人の名刺作りで、カリグラフィーで書いたテキストをアルミ製の刷版に複写し、印刷しました。文字は構想の悪いイタリック体でしたが、その複製というものに魅了されたことを、今でもはっきりと覚えています。手書きの文字が印刷されたことを、まるで不思議な魔法であるかのように感じたのです。この、書かれたものと印刷されたものとの関係性の魅力はずっと私の中に残り、やがてカリグラフィーとタイポグラフィーとの、(多くの場合は見えない)相互的な関係を探ることになります。

同じ頃に、小さな町のお祭りLIER 150 ÅRのための仕事の依頼も受けました。そこで私は不意に、決して忘れられないこととなる広告業界の不誠実さと傲慢さを目の当たりにします。雑誌の見出し文字のデザインを依頼されたのですが、驚いたことにそれは、そのイベントに関するその他全てのロゴとして使い回され、先方が自分たちで手を加えたものまで使用していたのです。彼らは、出来の悪いÅR(年)の文字を150の0の中に入れていました。著作権の侵害を経験したのは、これが一度きりではありません。文字に携わる者にとっては信じ難いことに、多くの人にとって文字は尊重すべきものではないのです。

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右 『Rilke's Epitaph』(リルケの碑銘)2010年制作

あるとき父がローハンプトン・インスティテュート(ディグビー・ステュアート・カレッジ)の案内書を送ってきたことがありました。それはまたもや私の人生に大きな影響を与える出来事となります。リンゼイ・カステルが手書きした案内書のカリグラフィーの美しさについては勿論ですが、そのようにアマチュアレベル以上にカリグラフィーに真剣に取り組みたい人々が学ぶ場所があるということにも、同じように驚いたのです。

アン・キャンプは1970年代に教師向けのプログラムとして、カリグラフィーと製本の指導を始めました。ヘザー・チャイルドの『Calligraphy Today』第2版の中の教育についてのエッセイで、アン・キャンプが自分の哲学を概説しています。そのプログラムはやがて興味ある人全てを対象として実施されるようになり、各国から生徒が集まりました。殆どが社会人向け夜間授業に通った経験のある生徒だった中、ノルウェーにはそのような授業がなかったので、私は他の生徒より努力が必要だろうと言われました。単調で大変だった1年目を乗り切ることが出来たのは、鋭い観察力を持ったアン・キャンプの指導のおかげでした。私はそれまで使用していた古く錆びたペン先や道具の大部分を処分し、しっかりした見本と厳しい練習で、高揚感とともに新たなスタートを切ることになりました。最も苦労したのはファウンデーショナル体で、4ミリのエックスハイトに、ずっとある本のページを何枚も何枚も書いていきます。テキストに選んだのはウォルト・ホィットマンの詩でした。I sit and look out upon....何ページにもわたって、不揃いな文字が並びました。学校にはquiet roomという隔離室のような部屋があり、私はそこで清書に辿り着くまで練習し続けたのです。全く進歩がないまま何行も書き続けた後、突然何かしっくり来る瞬間がやってきました。しばらくしてアン・キャンプが私のそばにくると、その、苦労の跡のないしっくりきた場所をすぐに指差して「ここね!ここで何か起こりましたね。自分でも気付きましたか?」と言ったのです。

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ブックタイトル3点

ローハンプトンで私を指導してくれた教員には、他にゲイナー・ゴフ、トム・パーキンス、ジェラルド・フロイス、ジェン・リンゼイがいました。そして客員教員には、ドナルド・ジャクソン、ジョン・ウッドコック、アン・ヘックル、アラン・ブラックマンがいました。トムは文字のドローイングやストーンカッティング(石彫り)を指導していて、私にタイポグラフィーへの道を開いてくれました。後に私に大きな影響を及ぼすヘルマン・ツァップの作品を紹介してくれたのも彼です。「とにかくやりなさい!」がモットーのゲイナーは、私に「考えるのを止めて、取り掛かること」を教えてくれました。そしてジェン・リンゼイは、私には遺伝的に向いていないと認めざるを得ない製本を、指導しようと努力してくれました。

1989年、ローハンプトンでの最後の年に、アン・キャンプからSociety of Scribes and Illuminators(SSI)のフェローに申請しないかと提案されました。そして満場一致で最年少且つ、現在に於いても尚、唯一のスカンジナビア人のフェローとして選出されたのです。私の文字の分野での旅は、そのとき始まったようなものです。ペンを回転させながらのペンアングルの調整、筆圧の変化、ストロークのビルトアップやリタッチなど、高度な技術を使う先輩たちの作品を見始めたばかりの頃のことでした。これらの技術は(ビルトアップのヴァーサル体やカヌート・チャーター体を例外として)、ローハンプトンでは少なくとも常時教えられているものではなく、ジュリアン・ウォーターズや、ジョン・スティーブンス、ヘルマン・ツァップからは、多くのインスピレーションをもらいました。

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レターデザイン3点

記事の英語版はこちらからご覧ください

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<プロフィール>

Christopher Haanes クリストファー・ハーネィス

1966年生まれ。ノルウェーのオスロに在住するカリグラファー、ブックデザイナー、タイポグラファー、教師、作家。Society of Scribes and Illuminators(SSI)では唯一のスカンジナビア人のフェロー。カリグラフィーやタイポグラフィーを指導し始めて20年以上経ち、その間イギリス、オランダ、ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、オーストラリア、香港、アメリカにてワークショップの講師を務める。1989年からオスロの Westerdals School of Communication(かつてのSkolen for Grafisk Design)にて教鞭をとる。雑誌 『D2』、『Prosa』、『Numer』、『Snitt』に記事やエッセイが掲載され、カリグラフィーとタイポグラフィーの5冊の著書、『Håndbok i kalligrafi』(Aschehoug 1994)、『Kalligrafi』(NRK Fale 1998)、『Bokstavelig』(Aschehoug 2004)、『ABC for voksne og Abstracts (H//O//F 2012)では、デザインも手掛けている。現在は、カリグラフィーの手引書を英語で執筆中。『Letter Arts Review』のThe Annual Juried Issue他、ノルウェーや海外の出版物に作品掲載多数。

ウェブサイトhttp://christopherhaanes.com/

クリストファー・ハーネィス「カリグラフィーWS」2014

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「カリグラフィーWS」開催日程・講座内容

2014年10月~11月に開催いたします「クリストファー・ハーネィス カリグラフィーワークショップ」の参加者受付けを開始いたします。注意事項をよくご確認のうえ、お申込みください。
全ての講座に通訳を配し、参加者の受講をサポートいたしますので、言葉のご心配は不要です。たくさんのお申込みをお待ちいたしております。

2014年10月11日(土) ~13日(月・祝) 東京
Vitalize your hands - カリグラフィーの書体を活性化する

イタリック体、ファウンデーショナル体、もしくはカロリンジャン体(小文字)は、どのようにしたら生き生きとした活力のある文字になるのでしょうか。ペンのマニピュレーション(操作)、筆圧の変化、ストロークのビルトアップ(何回かに分けて文字を組み立てていくこと)やリタッチなどの高度な技術を使って、方法を探っていきます。ストロークそのものに力強さや変化を与える方法がわかると、最終的にどんな書体やスタイルにも生かせるようになります。

2014年10月18日(土)・19日(日) 名古屋
Roman Capitals - ローマンキャピタル

平ペンを使って、最初は簡易化されたセリフの無い形から、徐々にセミフォーマルなセリフをつけたもの、そしてフォーマルなローマンキャピタルへと進んでいきます。また、このワークショップでは、形式にとらわれないリラックスした動きを取り入れた練習に使えるローマンカーシブも見ていきます。

2014年10月23日(木)・24日(金) 大阪
Foundational deconstructed, reconstructed and vitalized -
ファウンデーショナル体 - 分解、再構成、そして活性化

どのようにしたらファウンデーショナル体をもっとモダンな文字にできるのでしょうか。ペンのマニピュレーション、筆圧の変化、ストロークのビルトアップやリタッチなどの高度な技術を使ってそれを探っていきます。

2014年10月25日(土) ~27日(月) 大阪
Vitalize your hands - カリグラフィーの書体を活性化する

イタリック体、ファウンデーショナル体、もしくはカロリンジャン体(小文字)は、どのようにしたら生き生きとした活力のある文字になるのでしょうか。ペンのマニピュレーション(操作)、筆圧の変化、ストロークのビルトアップ(何回かに分けて文字を組み立てていくこと)やリタッチなどの高度な技術を使って、方法を探っていきます。ストロークそのものに力強さや変化を与える方法がわかると、最終的にどんな書体やスタイルにも生かせるようになります。

2014年11月1日(土) ~3日(月・祝) 広島
Roman Capitals - ローマンキャピタル

平ペンを使って、最初は簡易化されたセリフの無い形から、徐々にセミフォーマルなセリフをつけたもの、そしてフォーマルなローマンキャピタルへと進んでいきます。また、このワークショップでは、形式にとらわれないリラックスした動きを取り入れた練習に使えるローマンカーシブも見ていきます。

2014年11月 6日(木)・7日(金) 東京
Italic variations - イタリック体のバリエーション

ペンのマニピュレーション、筆圧の変化、ストロークのビルトアップとリタッチなどの高度な技術を使って、イタリックのバリエーションを作り上げていきます。

2014年11月8日(土)・9日(日) 東京
From pen to print to pen again - ペンから活字体へ、そして再びペンへ

「script typeface」と呼ばれるカリグラフィーに基づいて作られた手書き風の活字書体に注目し、そこから違う書き方やより意図的に書く方法が学べるのかを探っていきます。

参加者に必要なスキルの目安

今回のワークショップで学ぶイタリック体・ファウンデーショナル体・ローマンキャピタルなど、カリグラフィーの基本的な要素を多く含む書体について習得し、成り立ちを理解していること。

講師プロフィール

Christopher Haanes クリストファー・ハーネィス
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1966年生まれ。ノルウェーのオスロに在住するカリグラファー、ブックデザイナー、タイポグラファー、教師、作家。Society of Scribes and Illuminators(SSI)では唯一のスカンジナビア人のフェロー。カリグラフィーやタイポグラフィーを指導し始めて20年以上経ち、その間イギリス、オランダ、ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、オーストラリア、香港、アメリカにてワークショップの講師を務める。1989年からオスロのWesterdals School of Communication(かつてのSkolen for Grafisk Design)にて教鞭をとる。雑誌D2 (Dagens Næringsliv)、 Prosa、Numer、Snittに記事やエッセイが掲載され、カリグラフィーとタイポグラフィーの5冊の著書、Håndbok i kalligrafi (Aschehoug 1994)、Kalligrafi (NRK Fale 1998)、Bokstavelig (Aschehoug 2004)、ABC for voksne og Abstracts (H//O//F 2012)では、デザインも手掛けている。現在は、カリグラフィーの手引書を英語で執筆中。Letter Arts ReviewのThe Annual Juried Issue他、ノルウェーや海外の出版物に作品掲載多数。

講師ウェブサイトhttp://christopherhaanes.com

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クリストファー・ハーネィス「孤立した環境の中でのカリグラフィー」前半
クリストファー・ハーネィス「孤立した環境の中でのカリグラフィー」後半

NPO法人化を目指して

J-LAFは、NPO法人ジャパン・レターアーツ・フォーラム設立に向けて、第一歩を踏み出しました。
私たちは、J-LAF設立当初からNPO法人化の道を模索して来ました。そしてようやく機が熟し、先般(2014年5月2日)、都庁にNPOの認証を申請し、無事に受理されました。今後審査を経て、早ければこの秋頃にも結果が分かる予定です。

引き続き、皆さまのご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

ジャパン・レターアーツ・フォーラム
代表 三戸 美奈子

ゴードン恵美「レターカッティング入門WS」2014

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2014年レターカッティング・ワークショップの概要と募集要領が決まりましたので、参加受付を開始いたします。講座概要・募集要項をよくご確認のうえ、お申し込みください。

レターカッティング WS 概要

石に手彫りで字を彫るレターカッティング "Letter Cutting"(またはレターカービング "Letter Carving"と呼ばれる)は現在も英国国内だけではなく、ヨーロッパの国々で続けられている伝統工芸です。この入門コースではヴィーカット"V-Cut"と呼ばれる彫り方で文字を彫ることを学びます。このヴィーカットは、ローマ帝国時代に既にその手法が確立され、当時の碑石に使われていたローマンキャピタルの文字のほとんどはこの彫り方で彫られています。

イギリスではエドワード・ジョンストン(1872 - 1944)の教え子だったエリック・ギル(1882 - 1940)が、そのローマ時代の伝統的手法を彼の石碑の作品に多用し、彼のワークショップ(工房)で培われたレターカッティングの精神、技術、そして教法は、彼の弟子達を通じて今なお多くの職人の中に息づいています。この入門コースはそのギルの弟子であったデービッド・キンダスレー(1915 - 1995)の教法で主に進められます。

また、コース内では文字のレターフォーム、デザイン等を参加者同士で検討し合うクリティーク(Critique) と呼ばれるローハンプトン大学で採用されていた教法を導入し、生徒それぞれの作品をさまざまな側面から向上を目指とともに、作品作りにおける生徒の自発性を伸ばしていきます。

入門初回コースの目的

石の彫り方だけでなく、道具や石の取り扱い方にも重点を置き、職人としての心構えを体感していただきます。
  
◆ 入門初回コースの内容 
1日目 石と道具の取り扱い方 彫り方の注意点 各自持参したデザインのクリティーク
2日目 試し彫り デザインが終了した生徒さんは、デザインを石に写す作業
3日目 デザインを石に写す作業が終了した生徒さんは、石を彫り始める
> 詳細 2014_入門コースのご案内(pdfファイル)
 
 

経験者コースの目的

石を彫ることに集中して、道具と石に対しての繊細な感覚を養い、彫る技術の向上につなげていきます。文字に対しても細かい部分に気をつけながら全体の作品としての完成度を高めていきます。
 
◆ 経験者コースの内容
1日目 参加者各自の現在の進行状況を報告
    ワークショップで達成したい事を明確にし、彫り始める
2日目 前日の作業の継続 彩色、金箔貼りのデモ等
3日目 仕上げとクリティーク
> 詳細 経験者コースのご案内(pdfファイル)

■ 参加資格
ローマンキャピタルをペンや平筆で書いた事がある方、またはローマン体のタイプフェイス(例えばPalatino, Optimaなど) を鉛筆でドローイング出来る方。
 

スライドショー&デモンストレーションの内容

スライドショー:『カードーゾ・キンダスレーの後』
講師を含め、キンダズレーワークショップを卒業した同僚のその後の活躍について
所要時間:1時間 + 質疑応答
講師によるデモンストレーション+参加者によるトライアル: 所要時間 45分程度

※両会場共に、経験の有無を問わずお申し込み可能です。
スライドレクチャー・デモンストレーションのみの参加も歓迎です。

 

開催日程と会場

<東京会場>

ワークショップ&自主練習会

WS
7月18日(金) 9:30 - 18:30
7月19日(土) & 20日(日) 9:30 - 16:30
自主練習会
7月21日(月・祝) 9:30 - 16:30
※自由参加 - 講師も参加の石を彫ることに集中する時間とします。
会場
未定
定員
15名
スライドレクチャー&デモンストレーション

日時
7月19日(土) 18:00 - 20:00
会場
未定

<関西会場>

ワークショップ&自主練習会

WS
7月24日(木)~26日(土) 10:00 - 17:30
自主練習会
7月25日(金)・26日(土) ワークショップ終了後
※ 自由参加 - 講師も参加の石を彫ることに集中する時間とします。
会場
東灘区民センター 陶工芸室・美術室・会議室 (神戸市東灘区)
http://www.kobe-bunka.jp/facilities/higashinada


スライドレクチャー&デモンストレーション

日時
7月23日(水) 18:30 - 20:30
会場
大阪市立青少年センター(KOKOPLAZA) 会議室 801 大阪市東淀川区
http://www.kokoplaza.net/

 

参加費

✒ワークショップ  
    初心者(1回目)  32,000円(石代1枚分込み)
    経験者(2回目以降) 30,000円
✒スライドレクチャー&デモンストレーションのみの参加  1,000円
✒自主練習会 お一人当たり500~1,000円程度
    当日の参加人数で会場費を当分した金額をご負担いただきます。
    当日会場にてお知らせいたします。
 
■ 見学希望者の受付について
ワークショップの見学を希望される方は、事前の申込をお願いいたします。
会場の入場定員の関係もありますので、1度に受け入れられる人数は3名までとします。
見学に来場されたい希望日時と参加者名および連絡先メールアドレス・携帯電話の番号を明記のうえ、申込受付アドレスまでご連絡ください。
同じ時間帯に希望者が重なった場合には、時間調整をお願いする場合がございます。予めご了承ください。
 

申込方法

e-mailのみの申込みとし、先着順にて受付けます。
ワークショップ担当者が受付を確認し、お支払い手続き等のご連絡をいたします。
 
必要事項を記入したメールを下記のアドレスにご送信ください。パソコンからのメールを受信可能な状態であれば、携帯電話のメールでの申込みも可能です。
 
1) 件名に、「ゴードン恵美WS東京会場」又は「ゴードン恵美WS大阪会場」と記入。
2) 本文に、氏名(ふりがな)、住所、携帯電話番号、連絡を希望するメールアドレス、初参加・経験者のいずれかを記入。
3) 参加を希望する講座名(ワークショップ・スライドレクチャー&デモンストレーション・自主練習会)を明記。
 
■ 送信先
workshop マル j-laf.org(WSに関する質問、ご意見もこのアドレスまで)
※ 自動返信メールが送信されます。届かない場合にはinfo マル j-laf.orgへご連絡ください。
※  マル を@に変換してください。

 
■ 申込開始日・締切日  
申込開始日: 4月10日(木) 21:00より
申込締切日: 4月27日(日) 24:00まで
但し、締切り後に定員に空きがある場合には、その後の申込みも受付けます。空きの有無はJ-LAF ウェブサイトでお知らせします。  https://j-laf.org/
 
■キャンセルについて
期限までにお振込みがない場合には、受講はキャンセルとみなし、キャンセル待ちの方に順に連絡させていただく場合がありますのでご注意下さい。ご旅行など、振込が間に合わない事情のある場合には、前以ってご連絡をお願い致します。
振込後のキャンセルについては原則として返金をいたしません。ただし、次のキャンセル待ち受講者もしくは受講者の紹介をいただける場合には、キャンセル手数料として1,000円を差し引いた残りの金額をWS終了後に返金いたします。
 

講師 ゴードン恵美

<プロフィール>
1995年にカリグラフィーを東京で習いはじめる。翌年、トーマス・イングマイヤー氏のワークショップを受け、海外でカリグラフィーを学ぶ事を決意する。2年の準備期間を経て、97年に渡英、98年にローハンプトンのカリグラフィー・ディグリー(学位)コースに入学する。2001年にこのコースを卒業後、2002年にケンブリッジにあるレターカッティング工房であるカードーゾ・キンダスリー・ワークショップ(Cardozo Kindersley Workshop) に入門する。2006年に長女出産のため退職するまでの4 年半勤務する。現在は独立してレターカッティングとカリグラフィーの仕事を続ける。2002年、CLASのBrian Walker賞受賞、同年から2004年までSSIのAdvanced Training Schemeのコースに参加。その他多数のカリグラファー、レターカッティングのワークショップやレクチャーに参加。日本でのレターカッティング・ワークショップは今年で5回目の開催。
講師ウェブサイト http://www.tsukusidesign.com

下田恵子「手で文字を書くということ」

この記事は、2013年に、オンラインで万年筆などを販売する会社、Pilotfish Pensから、手書き文字を使って仕事をしている者として下田恵子さんが受けたインタビューの和訳の概略です。したがって、話の内容はカリグラフィーのペンや作品についてというよりも、万年筆が主体になっています。

彼女の祖母の影響で書道を3歳頃から始め、その後随分経ってから祖父の万年筆を譲り受け、1995年頃にカリグラフィーを始めた経歴をお持ちです。

<本文>
神戸にいたころは船会社でOL をしていました。仕事も楽しく、多くの良い友人にも恵まれて、良い経験にはなったと思うのですが、私でなくても誰にでも代わりができる仕事ではないだろうか、という思いがずっとありました。2001年に渡英し、2012年にフリーランスのカリグラファーになるまでのあいだ、イギリスで自由に働けるようになるビザを取るために、主に結婚式関係のステーショナリーを手がける会社で働きました。仕事を先に見つけてからの渡英ということで、ラッキーではあったものの、それでも色々なことがありました。その時期に他のカリグラファーと一緒に働くこともあり、それらを通して、今自分がどうやって仕事をしていくべきかを勉強できたのではないかと思います。

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上段
Mulberry 招待状:2014年春夏コレクションの発表に合わせて開催された VIP用晩餐会の招待状。
Envelopes:個人の結婚式の封筒表書きを担当。
中段
Thank you tags:サンキュータグ。イベントのお持ち帰りバッグに付けたタグ。
Place cards : 個人の結婚式でのプレースカード。背の高いカードだったため、名前の下にテーブル番号を入れて、席次表代わりに。
下段
Butterfly & square envelope:Mulberry の 2013年秋冬コレクションのショーの招待状。封筒の表書きを担当。

現在の仕事は、イベントの招待状、認定表やプレースカードなど数をこなすものから、ロゴ制作などのデザイン的なもの、それから様々な言葉、物語、詩などを書き表すものまで多岐にわたります。書道をしてきましたので、それをアルファベットと組み合わせることもなくはないのですが、書道とカリグラフィーは完全に異なるものです。道具ひとつをとってみても、筆とペンは似て非なるものですし、また文字についていえば、アルファベットが26文字しかないのに対して書道には多数あります。さらに上から下に書いていく文字と、左から右へ書いていく文字とでは、成り立ちも続け書きの様も変わってきます。全く異なるものをうまく組み合わせるのには、まだまだ私が未熟なこともあり、時間がかかると考えています。

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上段左から
Christie's window : オークション老舗のクリスティーズからの依頼で、「あそび」の三文字をカタログ表紙用に書いたもの。展示会場でのウィンドウディスプレイ。
日産プロモーション INFINITY: 2004年ごろ依頼され制作。パンフレット用に色々な筆のストロークを画像として送ると同時に、彼らの事務所に出向いて、筆の動きをビデオに撮られる。その後車のウエブサイトのオープニングとして使われた。
White Flower : 2005年制作。個人蔵。ファブリアーノ紙、墨、筆、オートマチックペン、印。山頭火の「山から白い花を机に」を日本語と英語で。
下段
Cried to Dream Again: 2003年制作。個人蔵。ファブリアーノに墨と印。オートマチックペンとミッチェル。シェイクスピアの「テンペスト」からの一節。


日本での幼少期、祖父と仲が良かったせいもあって、彼の使用していた万年筆に憧れていたのを覚えています。言うほど達筆でもなかったけれど、祖父は手紙を書く時はいつも必ず万年筆でした。渡英してからもらった手紙もすべて万年筆で書かれており、その時の万年筆をのちに譲り受けて、今でも私が使っています。書いた時に、ボールペンなどよりも明らかに上等な感じがして、大人の使うものだと子供心に思った記憶があります。万年筆には、良い食器を使う時のような特別感があり、また、あえてそれを日常使いすることへの楽しみをも併せ持つツールなのではないかと思います。

私は、手で文字を書く行為というのは、ある意味特殊な表現方法だと考えています。趣味や仕事を通じて、手でものを書くことに時間と手間をかけてきました。毎日書くことによって、文字を見る目は訓練されます。目が肥えてくればくるほど、自分の書く字のアラはより目立ち、もっと上達したいと思うようになります。また、何で書くか、何に書くかによって、書く感触が変わり、結果としての外観が変わってくることにも気付きます。ペンや万年筆など、筆記用具によって書き味は変わりますし、書く紙によってもその感覚が変わってきます。万年筆で書く時は、ボールペンなどで書く時よりも良い紙を使いたくなります。コピー用紙でも良いのかもしれませんが、そうすると万年筆に紙が釣り合わずにもったいない気がしてきます。お店でカードを買ってきて、その表面がもしぴかぴかでつるつるだったら、万年筆で書くのを選ばないように思います。これはカリグラフィーでも同じかもしれません。書きたい言葉によって、表したい質感も違ってきませんか。

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上段
千字 : 千字文の一節を行書で。寒来暑往秋収冬蔵、雲騰至雨露結為霜。
幟:映画 47Ronin セットより。色を塗った布の上に銀のメタリックペイントで南無釈迦牟尼仏。撮影時に火で焼かれた。
下段
提灯:映画 47Ronin セットより。着色済み提灯にペンキでお祝いの字を。隷、篆、行書など。表面が平らではないのでやたらと時間がかかった。
寺柱:映画 47Ronin セットより。絹に般若心経を様々な書体で書いたもので柱をくるむ。大きく書けて気持ちが良かった。


書道をしていたおかげで、手で文字を書くということに違和感なく育ってきた私ですが、近代技術の発達によって、今の子供たちは文字に対して違った接し方をしていると思います。私の学生時代には Eメールなどなく、手紙というと手書きしか手段がありませんでした。今はソーシャルメディアが普通に彼らの周りに存在しています。はたして手紙やメッセージを手書きするのと、デジタルで字を打ち込んでいくのとは同じ行為でしょうか。もしあなたの友人が近い人を亡くしてその気持ちに寄り添いたい時、テキストやメールで済ませたりしますか。逆にお祝いにしても、特別な時の特別な気持ちは本当にキーボードからで伝わるでしょうか。

ソーシャルメディアがこれだけ当たり前に身の回りにあると、ペンと紙を手に取る機会は減るでしょう。Facebook や Twitter は即時性があります。「今」の気持ち、何が起こっているか、その「瞬間」を多くの友人と同時に共有できる点はすごいと思います。手紙ではそういう場合、どうしても時間差がでてしまいます。デジタルと手書き、どちらが優れているかという問題ではなく、違う場面、違う目的での異なる手段なのだと思います。例えば、手紙は実際にある物質として保存することができます。手紙をとっておきたくなるのと同じ気持ちや目的で、メールをわざわざプリントアウトして、ファイルしておくようなことは、ほとんどないでしょう。手書きの手紙はとっておきたくなりませんか。手書きのものに限らず、手作りのものが特別なのは、それがこの世でたった1つのものだから、なのではないでしょうか。
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上段
Season and Time :2011年制作。サマセット紙にガッシュ、ミッチェル。
What Is Real? : 2012年制作。個人蔵。マージェリィ・W・ビアンコ著の童話 『ビロードのうさぎ』( The Velveteen Rabbit )からの一節。Zarkall 紙に墨、ペン。
下段
Sycamore : (部分) 2012年制作。Letters After Lindisfarne プロジェクトに参加した際の作品の一部。Saunders Waterford紙、ガッシュ、筆。
Berlin WS:ベルリンで書体デザイナーの菱倉聖子さんと一緒にワークショップをした時の模様。対象はグラフィックを勉強している大学生。

元のインタビュー記事はこちらから
http://www.theonlinepencompany.com/gb/blog/passion-handwriting/

映画製作に関わられた時のお話も、2014年中にJ-LAFウェブサイトに掲載予定です。どうぞご期待ください!

<プロフィール>
下田恵子
兵庫県西宮市生まれ。大学卒業後、神戸で船会社に8年勤め、2000年退社。2001年にロンドンへ行き Kirsten Burke Calligraphy Studio でアプレンティスとして1年勤める。その後同事務所がウエディングステーショナリーの姉妹会社 Mandalay Wedding Stationeryを立ち上げるのと同時に、そこでアシスタントグラフィックデザイナー、カリグラファーとして勤務。2010年ごろから他のカリグラ ファーの仕事などを手伝い始め、個人でも仕事を受け始める。2012年1月から7月まで 『47RONIN』の映画制作に、書道家として関わる。その後、書道、カリグラフィー両方の仕事を個人で受けるフリーランスになり、現在に至る。
『47RONIN』の後にも『007スカイフォール』や『鏡の国のアリス』など、何度か委託で映画制作に携わる。
主なクライアントとして、 Mulberry, Burberry, Jimmy Choo , Claridge’s , Christie’s など。
SSI(Society of Scribes and Illuminators)会員。
SLLA(South London Lettering Association)コミッティーメンバー。

ウェブサイト: http://www.j-wcalligraphy.co.uk

Kirsten Burke: http://www.kirstenburke.co.uk

ゴードン恵美「レターカッティング WS 2013 」レポート

◆◆東京会場レポート◆◆

東京会場:豊島区勤労福祉会館/東洋美術学校 2013年10月4日(金)〜10月7日(月)

報告者:松本千恵(マツモト チエ)  東京会場

かねてから是非参加したいと思っていたレターカッティング・ワークショップ。念願かなって、やっと参加することができました。
カリグラフィーを続けてきて、文字に対する興味は益々深まっていますが、平筆で書くローマンキャピタルを習い始めた時から、少なからずそれと関連のあるレターカッティングはいつか必ずやってみたいことでした。
永遠の憧れ、トラヤヌス帝の碑文の世界に少しでも触れてみたいと思ったのです。

期待に胸を膨らませ、東京会場での10月4日〜7日の4日間中、後半の2日間に参加しました。
既に2日前からワークショップは始まっていたので、自己紹介も早々に参加者の方々が各々の進捗状況に従って作業を始める中、皆さんにしばし手を休めて頂いて、宿題のデザインドローイングを参加者全員で合評することから、初参加の私のワークショップは始まりました。

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私は平筆で書いたローマンキャピタル文字からデザインを起こしたものを持っていったのですが、日頃自分の書いた文字を他の方から細かく批評頂くことは中々ない機会でしたのでとても勉強になりました。また参加者がカリグラファーだけでなくデザイナーの方もいたので、多角的な視点から的確な指摘を受けられたのは大変有意義でした。他の参加者の方々のデザインに関しても何度となく同じように合評しますので、それもとても勉強になりました。また、合評中、恵美さんはまずじっと耳を傾け、皆から意見を引き出すことで参加者一人一人の文字に対する意識を高め、文字に真正面から向き合う姿勢を呼び起こして下さっていました。
指摘を受けた点を念頭に丁寧にデザインレイアウトを修正していきます。
そして修正の度にまた皆に見てもらう。何度もこの作業を繰り返し、納得のいくまでデザインレイアウトに取り組みました。石を彫る時、デザインレイアウトを完璧にしておかないと完成度の高い美しい文字は彫れないのだとこの作業を通して痛感しました。
そんなわけで、早く石を彫ってみたいという気持が頭をもたげたりもするのですが、ひたすらデザインを吟味し丹念に書き直していきました。
特に今回の私のデザインはセリフの美しさ、文字自体のプロポーション、スペーシングなど厳密に追求していかないと綻びが一目でわかってしまいます。現に文字のステムの幅を尖った鉛筆の線一本分太くするか細くするかというレベルまで検討することになりました。
結局2日間のワークショップはひたすらレイアウトを修正して行く事に終始しましたが、とても充実した時間でした。
やはり、ある程度まとまった行程まで体得する為には4日間は必要なのだと参加して始めてわかりました。
合間にチズルの刃研ぎ、石の表面を流水にあてながらサンドペーパーで磨くなどの石を彫るための準備をしていきます。この時も恵美さんは参加者一人一人にデモしながらわかり易く指導して下さいました。これらの作業も丁寧に進めます。
今回は実際に石を彫るところまで辿り着きませんでしたが、それほどじっくり取り組むべきことなのだと実感しました。とにかくゆっくりじっくり丁寧に・・・が、大切なのです。
ワークショップ後、定期的に行われている勉強会(石彫会)にも参加し、既に何度も参加されている先輩方に手ほどきを受けながら少しずつ石に親しんでいます。
ライフワークとして取り組んでいきたいレターカッティングと出会えてとても嬉しく思っています。
次回のワークショップも是非参加して、いよいよ文字を彫る事を恵美さんから学びたいと今から楽しみにしています。

報告者:藤堂真以(トウドウ マイ)  東京会場

欧文書体の扱い方や、文字のつくりをはじめとする文字への理解を深める為に通っている、三戸美奈子さんのカリグラフィ教室にて、レターカーヴィングを体験することで、文字をより深く学ぶことが出来ると勧めていただき本ワークショップに参加しました。

ワークショップで使用する石のサイズは、150mm x 150mmの正方形で、「ALL IS WELL」という言葉を彫ることにしました。「ALL IS WELL」とは、WORKSHOPに参加する前に見た『THREE IDIOTS』というインド映画の劇中に何度も出てくる言葉で、インド訛りの音の響きと程よくポジティブな意味が気に入っていたのでこの言葉を選びました。

[1日目]
仕事の都合により2日目からの参加となりました。
クリティークでは、手書きからおこしたデザインや既存の書体を用いたデザインなど様々でしたが、どの参加者の方のデザインも驚くほど素敵なデザインばかりで、持参したものが少し恥ずかしく感じました。
私のクリティークでは、"難しい"や"言葉の持つ雰囲気との整合性がない"などの意見をいただき、自分でも感じていたことでしたので、思い切ってデザイン仕直すこと事に決めました。

1st Layout Pic ※持参デザイン
当初は書体やデザインよりも、とにかく彫ることしか考えておらず、Trajanで150mm x 150mmの中におさめました。


Thumbnail※ラフ1
いくつか書いていったラフの中の一つに、
文字のバランスをとる為にいれた"丸"が目のように見え、
笑っているように感じるラフができたので、
そのラフをベースに詰めていくことにしました。


Arrange_Rough1 ※ラフ2
太めで少しゆるいv特徴をもつ書体が言葉の持つ印象を上手く表現できるのではないかと考え、以前から使ってみたいと考えていた12世紀の書体にすることに決めました。
書体の載っている本が手元になかった為、記憶を頼りに大まかにラフを作りました。


[2日目]
2日目は、前日のラフをもとにレイアウトといきたかったのですが、使用する書体が古い為、WやUなど、その時代にはなかった文字があった為、
足りない文字を作る為に必要な分析の方法を恵美さんに教えていただき、足りない文字を作ることから始めました。
以下がその参考書籍とプロセスとなります。

Reference_Book※参考書籍:Krasne pismo
セリフの分析、その文字をどう書いていったのかやどう彫っていったのかを書籍にある文字から観察・考察し、まずは形を追っていきました。


Letter Creation※文字の分析
平筆で書いているという仮定で文字の始点・筆の角度・交わる形・交じり方等を観察していくとおぼろげながら文字の特徴が見えてきました。
※M
Mの左右のカウンターが違う所は、書き方によって出来る形であること。

※RやHのセリフの規則性

※セリフ
バランスをとる為にセリフが数種類あることや微妙な傾斜を持っていること。


1st Sketch以上のような分析をもとに足りなかったWを作成し2日目を終えました。
観察し作成している途中で、他の参加者の方に沢山アドバイスをしていただきました、その中で、この書体が碑文であること、持っていた本の巻末の資料の中に使用した書体を使った写真があることもわかり一文字一文字参考にすることが出来ました。また、豊富な知識と経験をもつ、他の参加者の方に文字についての話や細かなアドバイスをもらうことができ、制作の大きな助けとなりました。
分析の結果を反映し、150mmの正方形に合わせたデザインが左図となりました。


[3日目]
最終日は、使用している書体に2種類あるAを変更したり、バランスをとる為の装飾として入れていた丸を取り除くことや、
文字の位置等細かな部分の調整や修正をしデザインを完成させワークショップを終えました。

※調整プロセス

1st Sketch-1Arrange 2Arrange 3Finished


ワークショップの期間のほぼ全てをデザイン・ブラッシュアップに使ってしまい、期間中に彫り始めることは出来なかったのですが文字を分析し足りない文字を作り、豊富な知識経験を持つ人達に意見をもらい修正していくプロセスを経ることが出来たことは、良い経験となりました。
特に時代背景や、国や宗教・文化的な中での文字の話等を聞き、アドバイスをいただいたことは、
より文字への興味を大きくするもので、今後文字を学び制作する上で大きな助けとなる糧となったように思います。
期間中に石を彫ることは出来ませんでしたが、当初の目的である文字をより深く学ぶことは達成できたと考えています。
本ワークショップに参加することができ、本当に良かったです。
この場をかりて恵美さん、J-LAF、アドバイスやクリティークをいただいた参加者の方々にお礼申し上げます。
本当にありがとうございました。

Progress on Stone完成したデザインは恵美さん、三戸さんの薦めでVカットではなく、レイズド(浮き彫り)で制作をすることにしました。
現在自宅や石彫り会にて少しづつ完成に向けて手を入れています。
※1月現在の画像。


また分析した書体の残りもつくろうと目下製作中です。
Letter Sample

◆◆大阪会場レポート◆◆

大阪会場 :弁天町市民学習センター  2013 年10 月12 日(土)~ 10 月14 日(月・祝)

報告者:長野智美(ナガノ サトミ)  大阪会場

Exif_JPEG_PICTURE「レターカッティングのワークショップを受けようと思った理由は何ですか?」

ワークショップが始まったとき、初参加の3人に発せられたゴードン恵美さんからの質問。
「今、様々なワークショップを受けていて、その一環です」
「石が大好きなんです」
「今年の夏、キンダズリーの工房でLidaがチズルをダンダンダンッと振るって石に文字を刻んでいるところを見学し、あのように彫ってみたいと思ったからです」
三者三様の理由があった。最後の回答は私のものだが、恵美さんに即座に「あ〜、無理無理」と言われてしまう。
無理なことは重々承知。レターカッティングによって顕れる制作物よりも、その制作過程に一番の興味がある状態で私のレターカッティングのワークショップはスタートした。

参加者は、経験者4名、初参加3名。たまたま全員が女性でカリグラファー。北は福島、南は鹿児島から集い、均質さと異質さとが相乗効果を生み出す面白い構成だった。

1日目。自分が選んだ石と対面する。堅いマテリアル・・・。初対面のせいか、お互いによそよそしい感じ。

冒頭の質問の後、クリティークでいよいよワークショップが始まった。
初回の参加者は、彫りたい単語を石の大きさに合わせて書いてくることが宿題となっていた。要は彫りたい単語と石のサイズを選び、それに合わせてローマンキャピタルで書いてくること、なのだが、いつものように「こんな感じで」と書いただけでは不充分だったことをクリティークで思い知らされることになる。
経験者も、新しい作品についての草稿で迷っているためアイデアが欲しいとのことで6種類も草稿を出す人あり、草稿だけでなく、トラヤヌス帝碑文のローマンキャピタルを分析した研究発表する人ありで驚いた。初心者だけが受けるクリティークだとばかり思っていたからだ。

クリティークの後、初心者は問題点を指摘されたり、新しい方向性を示されたりして、草稿の書き直し。

その後、参加者全員で石の表面を保護するカバーを、アセテートフィルムを使って作成。石を傷つける心配が大幅に減って一安心。まだ、石を持つ手がぎこちない。

昼食は、ひとつの作業台を全員で囲んでのまったりタイム。3日間とも地方ネタが繰り広げられた。
初日の昼食後は、参加者のひとりの3年間に及ぶある勉強の発表があった。全員でその成果物に大興奮。
私ももっと頑張ろうと触発された。そう思ったのは私だけではないはず。

午後になると初心者は草稿の書き直し、経験者は石彫りの続きの作業という静かな時間が流れる。
経験者は初回からの参加者が多く、今までに数々の石を彫り上げた方もいて、作業の段階はまちまち。爆音かと思っていた石彫りの音は、チズルを優しく叩くハンマーの繊細な音だった。レダが彫っていた石は畳くらい大きかったので、音が違うのは当たり前だなと今さらながら気づく。

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白い鉛筆芯の削り出しも大事な作業のひとつ。初参加者にレッスンがあった。
削った芯を恵美さんにチェックしていただいたところダメ出しをされてしまった。ワークショップの目的のひとつに挙げられている「職人としての心構えを体感」すべく削り直しに精を出し、2回目のチェックで合格。職人気分をちょっと味わう。

参加者のひとりから、Vカットの文字に金箔貼りをしたいので貼り方を教えて欲しいとの申し出がなされており、恵美さんに接着剤の使い方、塗り方、乾かし方などを見せていただく。
金箔を貼るのは、12時間後以降、接着剤がある程度乾いてから。つまり翌日の作業となる予定。

そして、再度クリティーク。
初心者3名は宿題を抱えて帰宅した。

2日目。
クリティークで始まる。これは常に全員参加。細かい調整が入り始め、コピー機と作業室との往復で忙しい。

石を彫っている経験者はときおり恵美さんにヘルプを求めている様子、こちらは草稿の書き直しで頭がいっぱい。

金箔貼り用接着剤の乾き具合をチェック。上手い具合に乾いていたら金箔貼りへと移れるのだが、乾き方が今ひとつ。まだ接着剤がぬるりとしていた。
微妙な乾き具合が要求されるため、翌日まで乾かすことのリスクはあったが、このときは貼れる状態ではなかったため、翌最終日に賭けることに。

再度宿題を抱えて帰る初参加者。
なんとなく、最終日に石を彫れるところまで行かない予感が大きくふくらみ始める。

最終日の3日目。
金箔貼り用接着剤が上手く乾いており、金箔の貼り方を恵美さんの実践で見せていただく。箔の使い方が、日本の工芸品の使い方と違って贅沢、豪快なのが興味深かった。作品を屋外に置くことを考慮すると、必要な贅沢さではある。
流水を使いながらの仕上げも、石ならでは。石って面白い素材だと感得できた工程だった。
石がまるで柔らかい素材のように見えてしまう恵美さんとは違い、私は石とはまだおっかなびっくりの他人行儀な関係だが、そのうち仲良くなれそうな気がしてきた。

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経験者はキーホールを彫り、金具の取り付けまでを行う。
そこでキーホールを彫っていた人の石に欠けが発生。もともと割れ(石の組成に変化があり、割れやすい部分)のある石だったそうで、欠けの程度も大きく、一同しーんとしてしまう。恵美さんは動じることなく「大丈夫、大丈夫」と手際よく欠けを取り除き、再びキーホールが彫れるように修復して下さった。
そういうこともあるのよと仰る姿に経験の重みを見て安心する参加者。

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この日もクリティークが数度行われ、石に彫り始めることを観念すると同時に、クリティークの面白さに軽い中毒症状を起こして書き直しに熱中。
ワークショップが始まる前は、ここはダメだからこうしなさいと言われるのがクリティークだと思っていた。しかし、このワークショップでは、発表者の意見と恵美さんや他の参加者のさまざまな意見が出される。ダメ出しにしょんぼりすることもあれば、他の人の目の付け所に唸ったり、意外な点を褒めていただいたりすることもある。
今回は素材が石であるため、そのマテリアル感を考慮する必要があり、その重要な観点が抜けていたのを補ってもいただいた。

ひとりひとりのクリティークの締めくくりは恵美さんの「あなたはどうしたいの?」という質問。
クリティークとは、石に彫る文字に対する自分の姿勢を問い、常に「どうしたいのか」を突き詰めていく時間だった。もちろん、実際に指摘されるのは文字の形や大きさ、ラインの太さ、セリフの形、スペーシングなどだが、それのひとつひとつをどうするかについて、自分で明確な根拠やイメージを持っていなければ決めることが出来ない。

迷うのも自由。迷っていても、いずれ決めることが出来れば良い。恵美さんはそれまで待っていて下さる。

私自身は問われ続けることで、今までの作品の取り組み方への自省を促されることになり、気づかなかったこと、薄々気づいていながらやり過ごしていたことへ本格的に取り組む決心をすることが出来たのが、一番の成果だったと言える。

もうひとつクリティークという手法で興味深かったことは、自分が批評されるだけでなく、批評する側にも回るという点だ。自分自身の物の見方や感じ方、知識などを総動員しなければならない。それがお粗末だと、何も言えなくなってしまう。まだまだ学ぶことの多さと道のりの遠さに、ため息とわくわく感が同時にわき起こった。

草稿の書き直しで3日間が終わると思っていた午後、新しいチズルの卸し方、研ぎ方、石の磨き方を教わる。研いだり磨いたりは大好きな作業だが、時間の関係でチズル研ぎの70%工程くらいで終わってしまい、石磨きまでたどり着けず、宿題となった。

最後の最後、時計とのにらめっこしながら、試し彫りを体験させていただく。
チズルの持ち方も新鮮、ハンマーは思った以上に優しく振るうのがコツらしい。やっぱり彫るのは楽しい。早くダンダンダンッと・・・。

石に文字を刻むというのはどういうことか、作品を創るというのはどういうことかを考え続けた3日間も、終わりに近づいてきた。初日に懇親会があったこともあり、親しくなった参加者達と次回のワークショップで再会することを願いながら。
後日談:金箔貼りのとき、九州では墓石の文字に金箔を貼ることを教えてくれたYさん、墓石屋さんに突撃取材をされ、その模様をレポートしてくださいました。行動力と取材力に感謝。

Christopher Haanes「カリグラフィーWS」2014 詳細決定

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今年の秋のChristopher Haanesカリグラフィーワークショップ2014について、各開催地での講座内容と日程が決まりましたので、ご案内いたします。参加者募集告知は、6月を予定しています。J-LAFウェブサイトの告知でご確認ください。

<< 開催日程・講座>>
◆2014年10月11日(土) ~13日(月・祝) 東京
Vitalize your hands - カリグラフィーの書体を活性化する
イタリック体、ファウンデーショナル体、もしくはカロリンジャン体(小文字)は、どのようにしたら生き生きとした活力のある文字になるのでしょうか。ペンのマニピュレーション(操作)、筆圧の変化、ストロークのビルトアップ(何回かに分けて文字を組み立てていくこと)やリタッチなどの高度な技術を使って、方法を探っていきます。ストロークそのものに力強さや変化を与える方法がわかると、最終的にどんな書体やスタイルにも生かせるようになります。

◆2014年10月18日(土)・19日(日) 名古屋
Roman Capitals - ローマンキャピタル
平ペンを使って、最初は簡易化されたセリフの無い形から、徐々にセミフォーマルなセリフをつけたもの、そしてフォーマルなローマンキャピタルへと進んでいきます。また、このワークショップでは、形式にとらわれないリラックスした動きを取り入れた練習に使えるローマンカーシブも見ていきます。

◆2014年10月23日(木)・24日(金) 大阪
Foundational deconstructed, reconstructed and vitalized - ファウンデーショナル体 - 分解、再構成、そして活性化
どのようにしたらファウンデーショナル体をもっとモダンな文字にできるのでしょうか。ペンのマニピュレーション、筆圧の変化、ストロークのビルトアップやリタッチなどの高度な技術を使ってそれを探っていきます。

◆2014年10月25日(土) ~27日(月) 大阪
Vitalize your hands - カリグラフィーの書体を活性化する
イタリック体、ファウンデーショナル体、もしくはカロリンジャン体(小文字)は、どのようにしたら生き生きとした活力のある文字になるのでしょうか。ペンのマニピュレーション(操作)、筆圧の変化、ストロークのビルトアップ(何回かに分けて文字を組み立てていくこと)やリタッチなどの高度な技術を使って、方法を探っていきます。ストロークそのものに力強さや変化を与える方法がわかると、最終的にどんな書体やスタイルにも生かせるようになります。

◆2014年11月1日(土) ~3日(月・祝) 広島
Roman Capitals - ローマンキャピタル
平ペンを使って、最初は簡易化されたセリフの無い形から、徐々にセミフォーマルなセリフをつけたもの、そしてフォーマルなローマンキャピタルへと進んでいきます。また、このワークショップでは、形式にとらわれないリラックスした動きを取り入れた練習に使えるローマンカーシブも見ていきます。

◆2014年11月 6日(木)・7日(金) 東京
Italic variations - イタリック体のバリエーション
ペンのマニピュレーション、筆圧の変化、ストロークのビルトアップとリタッチなどの高度な技術を使って、イタリックのバリエーションを作り上げていきます。

◆2014年11月8日(土)・9日(日) 東京
From pen to print to pen again - ペンから活字体へ、そして再びペンへ
「script typeface」と呼ばれるカリグラフィーに基づいて作られた手書き風の活字書体に注目し、そこから違う書き方やより意図的に書く方法が学べるのかを探っていきます。

<<参加者に必要なスキルの目安>>
今回のワークショップで学ぶイタリック体・ファウンデーショナル体・ローマンキャピタルなど、カリグラフィーの基本的な要素を多く含む書体について習得し、成り立ちを理解していること。

ゴードン恵美「レターカッティング入門WS」2014 開催決定

2014年のレターカッティング・ワークショップの開催日程が決まりましたので、ご案内いたします。
昨年は秋の開催でしたが、今年は夏の開催となります。

クラスの詳細と参加者募集については、4月初旬に改めてご案内しますので、J-LAFウェブサイトにてご確認ください。

<講師> ゴードン恵美

<開催日程>
◆東京会場
ワークショップ 7月18日(金) ~20日(日)
スライドレクチャー&デモ 7月19日(土) 18:00 - 20:00の予定
自主練習会  7月21日(月・祝)

◆関西会場
ワークショップ 7月24日(木)~26日(土)
スライドレクチャー&デモ 7月23日(水) 18:30 – 20:30の予定
自主練習会   7月25日(金)・26日(土) ワークショップ終了後の時間帯に実施

<会場> 東京・関西いずれも都心部の予定。

<お知らせ>

  • 2014年のレターカッティング・ワークショップでは、初参加の方の募集を関西会場のみで行います。東京会場は経験者のみ参加対象となります。4月の募集告知に詳細を記載いたしますので、ご応募の際には、ご留意ください。
  • 「自主練習会」について
    石を彫ることに集中する自主練習会です。自由参加。講師も参加します。
    ワークショップへの参加は日程的に調整がつかない方でも、自主練習会にご参加いただけます。ただし、自主練習の時間のため、参加者は、経験者と今回のワークショップで初参加される方に限らせていただきます。ご了承ください。

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。

本年もジャパン・レターアーツ・フォーラムはカリグラフィーを軸としたレターアーツの発展のために、よりよい活動をして参ります。どうぞよろしくお願い致します。
2014_J-LAF_greetingcard

calligraphy   天竺桂靖子
design   市沢英子